仕事への誇りと心配りがなぜ大切か:プロフェッショナリズムの「活力サイクル」
- Aya Matsuyama
- 4 days ago
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最近ずっと考えている「仕事のエネルギー」についての話です。
皆さんは、今まで使った中で最も清潔で快適だった公衆トイレを覚えていますか?私はあります。驚くほど綺麗で、その時ふと、清掃している人に心からの感謝の気持ちが湧いたんです。単なる清潔さではなく、そこに「心」を感じたんですね。
逆に、汚くて放置されたトイレに入ったときの不快感はどうでしょう?その瞬間、私たちは清掃を担当する人に対し、無意識のうちに非難の念を抱いてしまいます。

「消耗サイクル」と「活力サイクル」
この日常の小さな体験の中に、仕事における「消耗サイクル」と「活性化サイクル」の違いがあります。
この二つの違い、そしてプロフェッショナリズムの根幹である「誇り」と「心配り(ケア)」が、そのサイクルを動かす上でとても大切な役割を果たす、ということについてお話させてください。
消耗サイクル:無頓着な雑用が「心を枯らす」
多くの国や地域で、公衆衛生の仕事は「他に選択肢がない人が、仕方なく選ぶ」という見方をされがちです。これがすぐに「消耗のサイクル」を引き起こします。
誇りがなく、配慮も欠ける:自分の役割に喜びや個人的な関心を持たない働き手は、最低限の義務を果たすだけに注力します。利用者の体験を想像することなく、チェックリストに印を入れることがゴールになります。
不十分な結果と利用者の不満の連鎖:トイレはすぐに汚れてしまい清潔さが長続きしません。利用者はその汚れた状態を目にし、「自分たちは大切にされていない」と感じ不満を抱きます。
非難、さらに深い嫌悪:利用者は清掃員に敬意を払えず、その態度が清掃員の仕事への嫌悪感をさらに強め、モチベーションの低さに拍車をかけます。
このサイクルでは、仕事は単にやらなきゃいけないタスクと化し、そのエネルギーは利用者だけでなく、働き手自身の心を消耗させてしまうのです。
活力のサイクル:誇りと心配りの相乗効果(生きがい)
日本の羽田空港(9年連続で世界一清潔な空港に選ばれている)の環境マイスター、新津春子氏のプロ意識は、まさにこのサイクルの象徴です。彼女たちの仕事には、日々の活動の中に「生きがい」が根ざしてします。
高い誇り+深い心配り:新津氏さん、以前は上司から「あなたの掃除には優しさが足りない」と言われたことがきっかけで仕事が変わったと言います。彼女は効率だけでなく「利用者の安全と快適さ」を最優先にする「心」を込めるようになりました。この利用者への献身こそが「心配り」です。高いレベルのサービスを提供することに強い責任感と誇りを持つからこそ、彼女は自然と笑顔で仕事ができるのです。
嬉しい結果と相互の敬意:利用者は、常に清潔で美しい空間に出会います。そして、何よりも重要なのは、その空間に「愛と誇り」をはっきりと感じ、それを可能にしている人への敬意を抱きます。
敬意が次の活力となる:社会からの敬意と感謝は、単なる報酬ではなく、次のやる気を引きだす原動力となります。これが誇りと「心配り」を強化し、高い水準を維持するサイクルを生み出すのです。
このサイクルでは、仕事は単なる雑用から「天職」へと変化し、自己価値と社会にとっての真の価値の源泉となるのです。
これは「日本だけ」? 人としての普遍的な選択
この話を十代の娘と交わしたとき、彼女はすぐにこう返してきました。
「それは日本特有のものだよ」
彼女の意見は、多くの人が持つものだと思います。優れた献身を見ると、私たちは「日本独特の文化の結果」だと片づけがちです。でも、文化的背景だけを見ていては、その行動の背後にある普遍的な真実を見逃してしまうのではないでしょうか?
プロフェッショナリズムは文化のみに因るものではなく、誇りと心配りを通して表現される「人格」によるところが大きいのではないかと思うのです。
清掃には「優しさ」と「心」が必要だという核心的な教訓は、世界共通のサービスの原則です。仕事内容に関わらず、個人が自らに高い基準を求める選択をするところには、必ず「活性化のサイクル」が見られます。
メキシコシティで、真の温かさ(心配り)で常連を惹きつける露店商。
ニューヨークで、常連の名前と注文を覚えて日常的なやり取りを個人的なつながりに変えるバリスタ(心配り)。
オーストラリアで、門の内側のゴミ箱を回収し、丁寧に元に戻す、一歩踏み込んだサービスを提供するゴミ収集員。
これらのプロ意識は、最善を尽くすという選択が、誰でもできる個人の決定であることを証明しています。まず誇りがあり、その心配りがサービスの質を保証する。そして、敬意と感謝という「文化」が後に続くのです。
プロフェッショナリズムとは、誇りと心配りを両輪とすること
重要な違いは、高給な職名でも、豪華なオフィスでもありません。
重要なのは、その仕事をする人自身の「プロ意識」です。
プロフェッショナリズムとは、個人的な誇りと、サービスする相手への深い思いやり(心配り)を原動力に、目の前のどんな仕事も卓越した成果でこなすという強い意志のことです。
この二つの要素を組み合わせることで、私たちは自分自身の活力サイクルを生み出し、仕事の中に生きがい(Ikigai)を見出します。結果的に、アウトプットの質が高まり、敬意を得て、自分自身の自尊心が高まるのです。
超高層ビルの設計であろうと、単に床を掃除する作業であろうと、誇りと細心の注意を払って取り組むことが大切です。なぜなら、その組み合わせは顧客にとってのメリットであるだけでなく、実は自分自身に与えられる最高の贈り物だからです。
どんな世界も私たちの意識と行動次第
ポッシブルワールド

