人間らしさの回復へ:知恵と技術を紡ぎ、次代を共創するリーダーシップの招待
- Aya Matsuyama
- 11月14日
- 読了時間: 5分
数値の壁を越える、真の「聴く力」への招待
COP30が今、ブラジルで開催されています。このような国際的な舞台で、世界のリーダーたちは今、何に心を傾けているのでしょうか。リーダーのみならず、私たちは今、効率的な数値や政策の情報交換にとどまらず、その裏にある一人ひとりの「物語」に、そして「どのように、なぜそうなったのか」という背景に、心を開いて耳を傾け合えているでしょうか。
自国の利害や規範を超え、真の「つながり」を理解し、共に何かを生み出そうと動くこと。これまでも、素晴らしい指針(SDGs、IDGs)がいくつも生み出されてきました。しかし、いまだに世界中の人が幸せに満ち溢れて生きている、とは言えない状況が続いています。これは、まさに私たちが見失った「人間らしさ」を取り戻し、持てる技術と智恵を融合するタイミングに来ている、と私は見ています。
人として生まれてきたからには、人らしく生きる。
そのための深遠な智恵が、実は日本の文化には豊かに息づいています。

リーダーシップの転換点—存在理由(パーパス)との接続
私はもともと技術屋であり、科学技術には日頃から強い関心を持っています。技術の発展は今も加速度的に進んでいますが、その進化のスピードに、私たちの倫理観や目的意識が追いついているでしょうか。技術の結果が直接人々の命に関わる専門家(私的には特に技術屋と医者😅)こそ、哲学を持ち、物事を俯瞰する力が大切になると考えます。
私たちが今、共に問いかけることは、
「どう生きるのか」
「何故ここにいるのか」
という根源的な問いです。技術の進化と、時間をかけて醸造された智恵。この二つが何のために存在し、どう活かされるのが望ましいのかを問うことが、人間らしさを取り戻し、次の世界へ進むための本質的な役割の根幹にあるように思えて仕方ないのです。
使命の発見と可能性の開花
私たちが提供している研修やワークショップで大切にしていることは、視覚化とスピードを偏重し、頭脳中心の判断に偏りがちな現代人が、感情や直感といったものとつながる機会を設けることです。これにより、
「自分がなぜイマ・ココにいるのか」
「自分がココにいる理由や使命」
が、おのずと見えてきます。私たちは皆、その人ならではの可能性を持って生まれており、その可能性を生きることこそが、私たち一人ひとりにとって自然な導きだと私は感じています。
智恵の体内化:体験を通じた血肉化
知識を真の智恵へと昇華させるために、私たちはシミュレーションという現実の疑似体験を提供しています。頭で情報として知っていることを、いかに自分の中に体内化して理解するか。この自分専用の経験を経ることで、情報が初めて自分の血肉、すなわち智恵となり、共感性を伴った、バランスの取れたより本質的な意思決定を促します。
温故知新:智恵と技術の融合
この智恵を基盤に、私たちは技術開発のパラダイムを「倫理的デザイン」へと転換し、より広い世界に目を向けることができます。
内省の実践と俯瞰力の回復
沈黙や五感の覚醒といった実践は、情報過多の環境から離れ、立ち止まって内省の時間をもたらします。これにより、技術の貢献度や潜在的な負の影響を俯瞰的に捉え直す力、そして未来の世代の生存権を考慮に入れたロングターミズム的な意思決定が可能になるのです。
日本の智恵を世界へ贈る
長年の海外生活を通じて、日本のこころが持つ、世界と分かち合う価値ある豊かな智恵に、私は確かな手応えを感じています。これは決して押し付けではなく、人間復興のやり方の一つとして、日本の文化を世界に英語で発信していくという、共創への招待です。例えば、
「足るを知る」の幸福論: 無限の経済成長に疲弊した社会に対し、「足るを知る」(満足を知る)という精神は、過度な競争を求めず、平穏な質的な豊かさに感謝する生き方を提案し、私たちの幸福(Well-being)を再定義します。
「もったいない」と共生の倫理: 日本の自然を畏敬し、その循環の一部として生きる感覚は、「もったいない」という、モノに宿る価値と生命を尊重する文化的な価値観を生み出しています。この智恵は、循環型社会の構築において、技術的な解決策を超えた、生活者の心に響く力となります。
次代の共創者への呼びかけ
時間をかけて醸造された智恵(哲学、日本のこころ)と、目まぐるしく進化する技術。温故知新によるこれらの技術と智恵の融合こそが、次なる世界への扉を開く鍵です。
私が今、個人的に力を注いでいるのは、以下の二つで、これらの要素を場づくりのエッセンスとして意図的に融合させています。
人間らしさを取り戻し、温故知新により、技術と知恵を融合させ、次の世界を想像すること。
人間復興のやり方の一つとして、日本の文化を世界に英語で発信していくこと。
リーダーのみなさま、シミュレーションを通じた自己の経験によって智恵を血肉とし、自身の可能性と使命を生きる旅に、ぜひご一緒しませんか。
この融合と共創の精神こそが、数値を超えた人間の物語を真に理解し、みんなが住みたい世界を共につくり出す力となる、私はそんな風に信じています。
どんな世界も、私たちの意識と行動次第。



