種を蒔くように─この可能性の世界で─第2章 芽吹きのはじまり
- P-Lab. Admin
- 4月29日
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更新日:5月7日
経済は、かろうじて持ちこたえた。
けれど、それは安定とはほど遠い。
この世界に生きる者たちは、皆、薄氷の上を歩くような感覚を抱えていた。
それでも、立ち止まるわけにはいかなかった。
それぞれが、 それぞれにとっての「豊かさ」を目指して、静かに歩き出していった。
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サクラは、乾いた大地にしゃがみ込み、そっと指で地面を撫でた。
かすかに湿った土を感じ取ると、彼女は微笑み、種を蒔いた。
一本、また一本。
小さな芽が顔を出す未来を信じて。
サクラは、緑の石を育てることを選んだ。
誰に命じられたわけでもない。
それは、彼女自身の願いだった。
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ウメは、誰よりも静かに動いていた。
かつて人々が集った市場跡を歩きながら、彼は、生活に困っている者たちにそっと手を差し伸べていた。
持っている青い石を分け、ときには自分の資源を譲り渡した。
声はなかった。
けれど、ウメの行動は、確かに世界に届いていた。
青の石を集めるために動きながら、ウメは、同時に「今、ここにある誰かのため」にも力を注いでいた。
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モモは、空を見上げた。
時計の針を早めることはできない。
だからこそ、彼女は一瞬一瞬を大切にしようと思った。
荒れた道を、ゆっくりと歩きながら、彼女は人々と話し、笑い、時には手を貸し合った。
モモが求めていたのは、ただたくさんの時間ではない。
自分のために、誰かのために、自由な時間を積み重ねることだった。
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ヤナギは、都市の端にある廃墟に向かった。
そこにはまだ、売買できる資源が眠っている。
それを見つけ出し、慎重に管理し、ヤナギは一つひとつ自分の資産へと変えていった。
彼女は、焦らなかった。
富を得ることは手段であって、目的ではない。
けれど、力を持つことで、守れるものが増えると、ヤナギは信じていた。
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カツラは、誰もが見落とすような情報を拾い上げていた。
小さな交渉、わずかな取引、ほのかな市場の動き。
それらを静かに紡いでいき、カツラは着実に、自分の富を築いていた。
冷静に、けれど温かさを失わずに。
彼女の歩みは、確かにこの世界の流れを変え始めていた。
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コブシは、朽ちかけた図書館に通い続けた。
そこには、人と人をつなぐための知恵が、まだ静かに眠っていた。
彼は、一冊一冊手に取り、忘れ去られた技術や思想を、未来へと紡ごうとした。
黄色い石──人の希望の象徴を、コブシはひとつずつ、手にしていった。
それは、目に見える力ではなかった。
けれど、誰よりも強い力だった。
**

六人は、それぞれに違う道を歩いていた。
だけど、根っこの部分では、どこかで繋がっていた。
この世界が、どこまで豊かになれるのかは、誰にもわからない。
それでも──
彼らは、歩みを止めなかった。
静かに。
確かに。
未来は、まだ白紙のままだった。
※ この物語は、実際に4月のポッシブルワールド・ディスカバリーセッションで起きた世界の記録を元に作られたフィクションです