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種を蒔くように─この可能性の世界で─第2章 芽吹きのはじまり

更新日:5月7日

経済は、かろうじて持ちこたえた。

けれど、それは安定とはほど遠い。

この世界に生きる者たちは、皆、薄氷の上を歩くような感覚を抱えていた。


それでも、立ち止まるわけにはいかなかった。


それぞれが、 それぞれにとっての「豊かさ」を目指して、静かに歩き出していった。


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サクラは、乾いた大地にしゃがみ込み、そっと指で地面を撫でた。

かすかに湿った土を感じ取ると、彼女は微笑み、種を蒔いた。


一本、また一本。

小さな芽が顔を出す未来を信じて。


サクラは、緑の石を育てることを選んだ。


誰に命じられたわけでもない。

それは、彼女自身の願いだった。


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ウメは、誰よりも静かに動いていた。


かつて人々が集った市場跡を歩きながら、彼は、生活に困っている者たちにそっと手を差し伸べていた。


持っている青い石を分け、ときには自分の資源を譲り渡した。


声はなかった。

けれど、ウメの行動は、確かに世界に届いていた。


青の石を集めるために動きながら、ウメは、同時に「今、ここにある誰かのため」にも力を注いでいた。


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モモは、空を見上げた。

時計の針を早めることはできない。

だからこそ、彼女は一瞬一瞬を大切にしようと思った。


荒れた道を、ゆっくりと歩きながら、彼女は人々と話し、笑い、時には手を貸し合った。


モモが求めていたのは、ただたくさんの時間ではない。


自分のために、誰かのために、自由な時間を積み重ねることだった。


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ヤナギは、都市の端にある廃墟に向かった。


そこにはまだ、売買できる資源が眠っている。

それを見つけ出し、慎重に管理し、ヤナギは一つひとつ自分の資産へと変えていった。


彼女は、焦らなかった。

富を得ることは手段であって、目的ではない。


けれど、力を持つことで、守れるものが増えると、ヤナギは信じていた。


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カツラは、誰もが見落とすような情報を拾い上げていた。


小さな交渉、わずかな取引、ほのかな市場の動き。

それらを静かに紡いでいき、カツラは着実に、自分の富を築いていた。


冷静に、けれど温かさを失わずに。

彼女の歩みは、確かにこの世界の流れを変え始めていた。


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コブシは、朽ちかけた図書館に通い続けた。


そこには、人と人をつなぐための知恵が、まだ静かに眠っていた。

彼は、一冊一冊手に取り、忘れ去られた技術や思想を、未来へと紡ごうとした。


黄色い石──人の希望の象徴を、コブシはひとつずつ、手にしていった。


それは、目に見える力ではなかった。

けれど、誰よりも強い力だった。


**


つながる根

六人は、それぞれに違う道を歩いていた。


だけど、根っこの部分では、どこかで繋がっていた。


この世界が、どこまで豊かになれるのかは、誰にもわからない。


それでも──


彼らは、歩みを止めなかった。


静かに。

確かに。


未来は、まだ白紙のままだった。



※ この物語は、実際に4月のポッシブルワールド・ディスカバリーセッションで起きた世界の記録を元に作られたフィクションです

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