種を蒔くように─この可能性の世界で─第3章 つながる根
- P-Lab. Admin
- 4月30日
- 読了時間: 2分
更新日:5月7日
日々は、静かに流れていった。
世界は、まだ不安定だった。
経済も、環境も、社会も、 完璧とはほど遠かった。
それでも──
人々は、少しずつ変わり始めていた。

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サクラが、小さな苗木を育てていたとき、 足りない緑の石を手にするために、 そっと手を差し伸べた者がいた。
ウメだった。
彼は、自分が持っていた青い石を一つ、サクラに渡した。
直接の役には立たないかもしれない。
それでも、誰かを助けることが、巡り巡って世界を育てると信じていた。
サクラは、その温かさを胸に抱き、 最後の一粒の種を蒔いた。
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モモが、静かに時間を集めていたとき、 彼女に余った時間を分けたのは、コブシだった。
彼は、自分のゴールとは違うものを抱えるモモに、 迷わず、自分の時間を差し出した。
「持っていけ。」 それだけ言って、彼はまた図書館へ戻っていった。
モモは、差し出された時間を両手で受け取り、小さく頷いた。
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ヤナギは、必要な資源を探しながら、 カツラとそっとやりとりを重ねた。
どちらも、富を築こうとしていた。 けれど、競い合うのではなく、お互いに欠けた部分を補い合うように。
カツラが渡したわずかな資源が、ヤナギにとっては最後のピースだった。
そして、ヤナギもまた、カツラに必要な情報を静かに返していた。
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ウメは、 自分が集めた青い石を、必要としている仲間たちに惜しみなく分け与えた。
一つ、また一つ。
その行動の果てに、気づけば自分にも、十の青い石が集まっていた。
彼は、誰かに与えるたびに、 自分自身が豊かになっていることを感じていた。
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コブシは、最後の黄色い石を、 知らない誰かから受け取った。
その小さな石には、何も書かれていなかった。
ただ、 「次へ繋いでくれ」という静かな願いだけが宿っていた。
彼はそれを胸にしまい、 また歩き出した。
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こうして、六人は、それぞれのゴールに手を伸ばした。
一人では成し得なかったことも、 誰かの手を借りて、誰かに手を差し伸べながら、少しずつ、たどり着いた。
※ この物語は、実際に4月のポッシブルワールド・ディスカバリーセッションで起きた世界の記録を元に作られたフィクションです