「対面か、オンラインか」という問いを超えて。—— AI共存時代に考える、つながりの「AND」思考
- P-Lab. Admin
- 23 時間前
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ワークショップや研修を企画する際、私たちはよくこんな議論をします。
「やっぱり熱量が伝わる対面がいいよね」
「いや、利便性を考えたらオンラインでしょう」
まるで「対面 vs オンライン」という対立構造があるかのように、どちらか一つを選ぼうとしてしまいがちです。しかし、それぞれの特性を深く見つめ直すと、これからの時代に必要なのは「OR(どちらか)」ではなく「AND(両方)」の視点であることに気づかされます。
今回は、それぞれの体験の「本質」を紐解きながら、私たちがテクノロジーとどう向き合うべきかについて考えてみたいと思います。

空気を共有する「対面」の豊かさと、その制約
対面で行うワークショップの最大の魅力は、やはり「非言語情報」の豊かさにあります 。 参加者のちょっとした表情の変化、姿勢、その場の「空気感」。これらは画面越しではどうしても削ぎ落とされてしまう情報です 。膝を突き合わせて話し合うことで生まれる一体感や、共有体験としての価値は、何物にも代えがたいものがあります。
一方で、そこには物理的な制約も存在します。「その場所に行かなければならない」という地理的な壁です 。また、対面の場では、声の大きい人や立場が上の人の影響力が強くなりやすく、無意識のうちに場の調和を重んじるあまり、本音が出にくくなるという「社会的・心理的なハードル」が生じることもあります 。
これらは対面の欠点というよりも、「場の力」が強いからこそ起こる特性と言えるでしょう。
「オンライン」がひらく、新しい可能性と包括性
では、オンラインはどうでしょうか。 かつては「対面の代替手段」と見なされがちでしたが、今では独自の価値を持つフィールドとして進化しています。
まず挙げられるのは、圧倒的な「包括性(インクルーシブネス)」です 。 ネット環境さえあれば、世界中どこからでも参加できる「場所の包括性」。これは単に移動時間がなくなるだけでなく、物理的な距離を理由に参加を諦めていた人たちに扉を開くことを意味します 。
そして見逃せないのが、「心理的な包括性」です 。 オンラインのフラットな画面上では、上座も下座もありません 。物理的な威圧感が薄れることで、役職や年齢に関わらず発言しやすくなる「心理的安全性」が高まる傾向にあります 。対面では遠慮してしまいがちな人が、チャット機能を使ったり、画面越しのフラットな関係性の中で、驚くほど活発に意見を交わす姿をよく目にします。
また、デジタルツール上での交渉や対話は、変化の激しい現代社会の縮図でもあります。急速な変化に取り残される不安や、デジタル社会特有の課題が可視化されやすいのも、オンラインならではの深い学びのポイントです 。
「人間」という文字が教えてくれること
こうして見ると、対面とオンラインは、どちらが優れているかという比較対象ではなく、それぞれが補完し合う関係であることがわかります。
対面: 濃密な人間関係と、身体的な共有体験を深める場
オンライン: 物理的・心理的な壁を取り払い、フラットなつながりを広げる場
ここで少し視点を変えて、「人間」という言葉について考えてみましょう。この漢字には「間(あいだ)」という文字が含まれています。これは非常に示唆的です。人は一人きりでは「間」を作ることができず、他者がいて初めて人間となれる。私たちは本質的に、誰かと繋がりながら生きていく生き物なのです。
そう考えると、技術の発展は私たちを孤立させるものではなく、むしろこの大切な「間」の作り方、つまり「つながり方のバリエーション」を増やしてくれていると捉えることもできるのではないでしょうか。
AIを「拒絶」するか、「共存」するか
この視点は、私たちが今直面している「AI(人工知能)」などの技術全般への向き合い方にも通じるものがあります。
新しい技術が出てきたとき、私たちは「人間らしさが失われる」と警戒し、拒絶してしまうことがあります。しかし、オンラインという手段が、対面では拾いきれなかった声を拾い上げ、新しい形の「間」を生み出したように、テクノロジーには「人間の可能性を拡張する」力があります。
AIを「人間の仕事を奪う敵」として拒絶するのか、それとも「自分の可能性を広げ、新たなつながりを生むパートナー」として共存するのか。
大切なのは、古いものを捨てて新しいものに飛びつくことでも、新しいものを否定して古いものに固執することでもありません。 対面の温かさも、オンラインの拡張性も。 人間の感性も、AIの知性も。
その両方(AND)を受け入れ、状況に応じて使いこなし、組み合わせていくしなやかさこそが、これからの時代を生きる私たちに必要な「マインドセット」ではないでしょうか。




