競争から共創へ──マーケティングのパラダイムシフト
- P-Lab. Admin
- 7月7日
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近年、マーケティングの世界において「共創(co-creation)」という言葉が注目されています。
かつては「競争に勝つ」「ターゲットを攻略する」といった戦略思考が主流でしたが、いま求められているのは、顧客とともに価値を育てていく視点です。
ポッシブルワールドラジオのとある回では、コミュニケーションデザイナーの坂本宗隆さんが、まさにこの「共創的マーケティング」の実践について語っています。
本記事ではその内容をもとに、従来のマーケティングとの違いや、現代における新しいアプローチの可能性について紹介します。
「好き」の声から始めるマーケティング
坂本さんのアプローチの特徴は、ファンの“ポジティブな声”に耳を傾けること。
従来のマーケティングやコンサルティングでは、課題や問題点の洗い出しを起点にすることが一般的ですが、坂本さんは「ここが好きなんです!」という熱のこもった声から、企業の本質的な価値を見つけ出していきます。
その声に基づき、「どんな施策を実施するのがよいか?」をクライアントと共に考えていく。
そこには、修正や改善ではなく、魅力の“深掘り”という発想があります。
ポジティブシャワーに浸かる時間
このプロセスは企業の担当者にも良い影響を与えています。
ファンの生の声に触れることで、「自分たちの仕事はちゃんと届いていたんだ」と気づかされ、自信や誇りを取り戻す時間になるのです。
「ポジティブシャワー」とも言えるこの体験は、データやレポートには表れにくい、人の心を動かす力を持っています。
「差別化」は本当に必要なのか?
マーケティングの基本フレームワークでは、「競合との差別化」が重要視されてきました。
しかし坂本さんは、そこに問いを投げかけます。
その“差別化”は、果たしてファンが求めているものなのでしょうか?
競合と同じ機能を持っていたとしても、ファンは“まったく別の理由”で繰り返し選んでいることがあります。
つまり、市場で勝つことよりも、なぜ好かれているのかを知ることこそが重要だといえます。
マーケティングの定義も変わり始めている
実は、マーケティングの定義自体も数十年ぶりに更新されました。
かつては「戦略」「ターゲット」「認知獲得」など、“戦い”のメタファーが多く使われてきました。
しかし現在は、「共に価値を創る存在との関係性構築」という方向に変化しています。
競争前提の“奪い合い”ではなく、ファンや関係者と共に価値を築く時代が始まっています。
共創がもたらす新たな可能性
製品やサービスの機能は、すでに一定水準を超えている時代です。
その中で選ばれる理由は、「スペック」ではなく“感情”や“共感”になりつつあります。
坂本さんの取り組みは、そうした「好き」という感情の力を戦略に組み込むことの大切さを教えてくれます。
共創とは、一時的なマーケティング手法ではなく、企業のあり方そのものを見直すきっかけになり得るものです。
「競争から共創へ」という視点の転換は、単なるトレンドではありません。
社会全体の価値観の変化に対応する、新たなマーケティングのかたちです。
顧客を「攻略対象」としてではなく、「共に未来を創る存在」として捉える。
そんなパラダイムシフトが、企業と社会の可能性をもっと広げてくれるかもしれません。