学びに“正解”を求めるクセ、手放せますか?
- P-Lab. Admin
- 5月10日
- 読了時間: 4分
新しいプロジェクトや、見慣れないタスクに直面したとき、多くの大人はまず「ルール」や「手順」を求めます。
何が正解なのか、どのように動けばいいのか。
その“ガイドライン”が提示されないと、不安に感じる方は少なくありません。
特にビジネスの現場では、その傾向が強く表れます。

「自由にやってください」と言われたときの、あの空気
ポッシブルワールドのルールの説明はごく簡単で、「自由にやってください」とだけ伝えられます。
すると、一部の参加者は黙々と作業に取り組み、他者と話すことも、質問することもなく、
「何が正解かわからないから動けない」
「まずは様子を見たい」
そんな空気が、場を静かに包むことがあります
無意識にしばられている、大人のマインドセット
このような反応は、大人に染みついたマインドセットのあらわれでもあります。
ルールは与えられるもの
正解を知ってから行動するもの
失敗するくらいなら慎重に動きたい
こうした思い込みが、無意識のうちに行動の幅を狭めてしまっているのです。
子どもたちは、まず動いてみる
同じようなプログラムに、子どもたちが参加したことがありました。
そのとき、まったく違う空気が流れていました。
子どもたちはルールが不明確でも、とりあえず動いてみるのです。
誰かに話しかけ、チャットで確認し、交渉し、時には失敗もしながら、少しずつ自分なりのやり方を見つけていきます。
「こうするとスムーズに進むかもしれない」
「これがうまくいかないなら、別のやり方を試してみよう」
そんな“気づき”が、行動の中から自然と生まれていくのです。
交渉から学ぶ、相手へのまなざしの変化
とりわけ印象的だったのは、交渉を通じて相手に対するイメージが変わっていく場面でした。
最初は名前も顔もよく知らなかった相手が、「思ったより親切」「しっかりギブしてくれる人だった」など、やりとりを重ねる中で印象がアップデートされていきます。
これは、マニュアルや一方通行の講義では得られない、体感的で深い学びです。
子どもたちは「教えられる」のではなく、「学びを自分で獲得している」。その姿は、大人たちが忘れかけている“学びの原点”を思い出させてくれます。
なぜ大人は「正解」を欲しがるのか
大人が正解やルールを求める背景には、これまでの教育や社会経験があります。
子どもの頃から、「与えられたルールに従うこと」や「正解を出すこと」で評価されてきた結果、「まずルールを把握してから動くべき」という思考が当たり前になっています。
また、立場や責任が増えると、失敗への許容度が下がり、自由に動くこと自体が難しくなります。
しかし、正解がひとつではない今の時代、“まず動いてみる”柔軟さこそが、実はもっとも必要とされている力かもしれません。
「個別最適化」の学びを認めるということ
学びの場で見えてくるもうひとつの視点は、「人それぞれのペースがある」ということです。
子どもたちを見ていると、早く理解して進む子もいれば、じっくり時間をかけて気づく子もいます。
一見「遅れている」と感じても、ある瞬間に急に理解する子もいます。
それを見ていると、学びを「スピード」や「正解の有無」で評価することの危うさに気づかされます。
そしてそれは、大人にも当てはまります。
それぞれに合ったタイミング、それぞれの方法がある。
だからこそ、「誰かと比べる」のではなく、「自分のリズム」を信じて進むことが大切なのです。
変化の時代に必要なのは、学び方の学び直し
ルールが曖昧なときこそ、対話が生まれ、発見が生まれます。
最初は戸惑いがあっても、やってみることでしか見えてこないものがあるのです。
「教えられる」のではなく「気づく」
「正解をなぞる」のではなく「問いを立てる」
それこそが、今必要とされる“学び方の再構築”ではないでしょうか。
子どもたちの柔軟な学びの姿は、大人にとってのヒントに満ちています。一度しみついたマインドセットを問い直しながら、もう一度、学び直す姿勢を持ってみる。
変化の時代をしなやかに生きるために、その第一歩は「まず動いてみること」なのかもしれません。
ポッシブルワールドのホストであり、和歌山県白浜町で2025年度から教育長、町内中学校で理科教諭、教頭、小学校・中学校校長を務めてきた「学校はウェルビーイングなパワースポット」を目指す僧侶でありCWO(Chief Well-being Officer)の西田拓大さんとP-Lab のayaがポッシブルワールド・ラジオの中で語ったお話