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学校に地域がやってくるーーただ“そこにいる”ことの価値

かつての子どもたちは、空き地や駄菓子屋、公園など、特に目的もなく集える場所で自然と人と関わることができました。

そこには、偶然の出会いと関係性の中で、教え合いでも競争でもない豊かな学びがありました。


しかし現代では、安全性や効率性が優先され、そうした「ただそこにいる」場所が少なくなっています。

子どもが地域の大人と出会う機会も減り、教育の現場でも、目的と成果が前提となる関係性が中心になっています。

偶然から始まる学びの余白が、静かに失われつつあります。


学校に地域がやってくる

実例紹介:こんな取り組みが始まっている

ある地域では、「ただそこにいること」を大切にする取り組みが始まっています。

たとえば、コワーキングスペースに子どもたちがふらっと上がってきて、大人が働く姿を近くで見る場面がありました。

そこでは、誰かが何かを“教える”わけではなく、自然な関心と会話が生まれていました。


また、学校の中に地域の人が立ち寄れるスペースを設け、「お茶を飲みに来る」「授業をのぞく」ようなゆるやかな関わりも始まっています。

学校という場所が、地域とつながるハブとして機能しはじめているのです。


「学び」は教室の外にもある

学びは、カリキュラムや教室の中だけで起こるものではありません。

何かを教える・教わるという関係ではなく、「共に過ごす時間」や「偶然の出会い」から得られる気づきも、大きな学びの源になります。


大人の何気ない姿勢や仕事への向き合い方は、子どもにとって多くのヒントになります。

そして逆に、大人もまた、子どもたちの反応や問いかけから、新たな視点を得ることがあります。

意図しないところからこそ、豊かな相互作用が育っていくのです。


大人の側にとっての意味

こうした場は、子どもだけでなく、大人にとっても意味のある時間になります。

日常では「会社の人」だった自分が、「地域の人」として子どもと関われる。

そこには、評価や成果から一度離れて、社会との新しい接点を見つける機会があります。


特別な知識やスキルがなくても大丈夫です。

ただそこにいる。

話しかけられる。

そのことが、子どもにとっても、大人にとっても安心感と信頼を生むきっかけになります。


どう作っていけるか?

このような場を実現するには、まず「物理的な空間」を開くことが第一歩です。

たとえば、学校に地域の人がふらっと立ち寄れるコーナーを設けるだけでも、出会いのきっかけは生まれます。


大切なのは、「何をする場」ではなく、「ただ来ていい場」として存在させること。

ルールで縛るのではなく、自然な“習慣”として根づくことが理想です。

教員、地域、企業がゆるやかにつながり、それぞれの関わりしろを持ち寄ることで、場が少しずつ育っていきます。


偶然が価値を生む社会へ

これからの教育に必要なのは、「計画された学び」だけではありません。

人と人との関係性の中から、偶然に芽生える学びや気づきにこそ、可能性があります。


「ただそこにいる」だけで価値がある。

そんな場が学校や地域に広がれば、学びはもっと人間的で、あたたかいものになるはずです。


子どもたちの未来を育むだけでなく、地域全体の土を耕すような場として。

そんな「新しい空き地」が、今、求められています。



ポッシブルワールドのホストであり、和歌山県白浜町で2025年度から教育長、町内中学校で理科教諭、教頭、小学校・中学校校長を務めてきた「学校はウェルビーイングなパワースポット」を目指す僧侶でありCWO(Chief Well-being Officer)の西田拓大さんとP-Lab のayaがポッシブルワールド・ラジオの中で語ったお話




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