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言葉の限界と「生きがい」の翻訳問題


言葉の持つ幻想

言葉の持つ幻想(イリュージョン)

私たちは普段、言葉を通じて思考し、他者とコミュニケーションを取っています。しかし、言葉とは本当に現実を正しく伝えるものなのでしょうか?言葉は単なるツールであり、文化や文脈によってその意味が大きく変わることがあります。

特に、日本語と英語の違いを考えると、この言葉の持つ「幻想(イリュージョン)」を強く感じることができます。その典型的な例が、「生きがい(Ikigai)」と「パーパス(Purpose)」の翻訳問題です。


「生きがい」と「パーパス」は同じものか?

「生きがい」という言葉は、日本語特有の概念として知られています。「生きる喜び」「人生のやりがい」「存在する意味」といった幅広いニュアンスを含んでおり、個人の感覚的な価値観に基づいています。一方で、英語の「Purpose(目的)」はより明確で、外向きな目標や使命を指すことが多く、ビジネスや自己啓発の文脈でよく使われます。

近年、日本の「生きがい」という概念が海外でも注目され、「Ikigai」として紹介されることが増えました。しかし、「生きがい=Purpose」と単純に訳してしまうと、本来のニュアンスが失われてしまいます。例えば、「生きがい」は趣味や家族との時間のような日常の小さな喜びにも見出されるものですが、「Purpose」はどちらかというと壮大な人生の目標や社会的意義を含むものとして認識されがちです。


言葉の違いが生む誤解と文化的背景

このような言葉のズレは、日本語と英語の思考の違いから生まれます。

日本語の特徴: 抽象的で、感覚的な表現を好み、曖昧さを許容する。

英語の特徴: 明確で論理的な表現を求め、概念を定義しようとする。

例えば、日本語には「気づき」「もったいない」などの単語があり、英語にそのまま訳すのが難しい言葉が多く存在します。逆に、英語の「Growth Mindset」や「Goal-Oriented Thinking」のような表現は、日本語に訳すと微妙なニュアンスの違いが生じます。

「生きがい」という言葉が海外で「Ikigai」として広まるのは嬉しいことですが、その本質が「目的」や「成功の秘訣」として誤解されることもあります。日本語の「生きがい」はもっと主観的で、個人の感覚に根ざしたものなのです。


言葉の限界を理解することで得られるもの

言葉は便利なツールですが、それに過度に依存すると、真実を見失うことがあります。私たちは言葉を通じて世界を認識し、他者と関わりますが、それが常に正しく伝わるとは限りません。

「生きがい」と「パーパス」の違いを意識することは、異文化理解の第一歩になります。また、自分が「正しい」と思う言葉の意味も、他者にとっては異なる解釈がありうるということを理解することが重要です。


言葉を超えたコミュニケーションへ

言葉の限界を知ることで、より深い対話が可能になります。文化の違いを理解し、言葉にとらわれずに本質を伝えることが大切です。

「生きがい」を「パーパス」と言い換えることで生じるズレを知ることは、異文化コミュニケーションにおいても有益な視点となります。言葉の枠を超えたコミュニケーションを目指し、私たちは柔軟な思考を持ち続けるべきでしょう。


 

ポッシブルワールド・ゲームホストであり、株式会社ナガイマーケティング研究所の代表であるマーケティング✕組織開発コンサルタントの長井菜穂子さんを招いたラジオの中で、言葉の幻想について語りました



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